織物と私①[布作りの始めは空と雲]
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最初の一枚は、空と雲だった
高校生になった私は、授業後にしばしば街に繰り出すようになりました。
街のお気に入りの洋服店のショーウィンドを何度も覗き込み、実際に服を手に取り、わくわくして。
ただ、既製品は高校生の私には高価で。
それなら、「自分の手で服を作ってみたい」という気持ちが大きくなっていったのです。
そして、「服を作るぞ」と生地店に足を運んだ日のこと。
色とりどりの反物が並ぶ棚、様々な柄の布がありとてもカラフルで、楽しい空間でした。
けれど、いくら探しても「これだ」と思える布が見つかりませんでした。
うーーん、なんだか違う。
「私の欲しい布」はこれじゃない。
もっと表情がある布がいい。
店頭の生地は、綺麗で整いすぎていたように、私の目に映ったのかもしれません。
ないなら布から作ろう
生地店の隅から隅まで周り「うーーん」と思った私は、気に入った布がないなら、自分で布から作ろうと閃いたのでした。
自分で染めたら、好きな布になるのではないか。そこで、染粉と真っ白い生地を買い家路に。
染めたことはなかったのです。
少し前に染織家という方の作品展に行ったことが微かな記憶として残っていました。紙に色をつけるように、布に色をつけるという創作があるのだと。
台所で大きめの鍋を引っ張り出し、水を張り、青い染料を少し溶かしました。
火にかけ、そこにとトポンと白い布を入れ。ドキドキしながらお鍋の中をのぞいて。
そろそろかなと色水から引き上げた白い布は、ところどころ染めムラができました。我流なので、均一に染まっていなかったのです。
うまく染めれなかった、、、と落胆の後、光の下で布を広げると、そのムラが雲のかたちに見えてきました。
水色の濃淡の合間にふんわりと白い雲。
そこには、空ができ雲が漂っていた。
わぁーーーっと嬉しさが広がりました。思っていた仕上がりとは全く違ったけど、想像していなかった美しい世界が。
今、ブランケットや服をつくるとき、あの日の水色を思い出します。
規則正しいだけの美しさではなく、手に取ったときに「少しずつ違う」ぬくもりを感じられるものを届けたい。
そう思いながら、一枚一枚の布に向き合っています。
台所で生まれた空と雲の布。その偶然の美しさが、今も私の手を動かし続けています。
→ 織物と私② (coming soon)



